鹿児島空港から車で約1時間、霧島連山のすそ野には、風光明媚な高原が広がっています。
「生駒高原」
春には菜の花とアイスランドポピー、夏にはサルスベリやサルビア、秋には100万本のコスモスが咲くその高原には、特に「ナイトコスモス」というお祭りが開催される10月頃、たくさんのひとが訪れます。
私がその場所を知ったのは、今から1年半前のこと。
その頃大学3年生だった私は、学生インターンという形でこの「灯台もと暮らし」編集部に参加してから、3ヶ月が経とうとしていました。そして2017年の3月、はじめての地方出張で宮崎県小林市を訪れることになったのですが、飛行機を降りてから最初に足を下ろした取材地が、生駒高原でした。
咲かない生駒高原の記憶
3月の中旬。はじめて降り立った生駒高原には、花などはなにひとつ咲いておらず、ただただ緑の絨毯が、霧島を背景になだらかに広がっていました。
正直、生駒高原が咲いていないと知った瞬間は、落ち込みました。だって、100万本のコスモスとまでは言わないけれど、さすがになにか咲いているだろうと思って来てみたら、本当になにも咲いていないんです。
けれども高原を歩いているうちに、そんな気持ちは段々と「どうでもいいもの」に変わっていきました。
そこに広がる自然は、なんの建物にも邪魔されることのない見事な景色のように感じたのです。標高400メートルの高さからは、西諸盆地が一望できて、鼻から吸い込む山の空気は、冷たく、とても澄んでいる。そして、どこまでも人の気配がしないことにも気づきました。
じつは生駒高原には2017年の3月だけでなく、その年の冬にも取材のために来訪していたのですが、訪れた時期が悪く、またも咲いている景色を見ることができませんでした。
けれどもこのときの私はもう、咲いていない生駒高原の素晴らしさを知っていたので、2度目に訪れたときは降り立ってすぐに、高原を守るメタセコイヤの防風林が広がる端の方まで走り回ったり寝っ転がったりしながら、自分が大人であることも忘れたように、先輩たちと戯れるひと時を過ごしました。
咲いていない生駒高原の思い出は、静かな空間に仲間たちの笑い声だけが響いていて、とても穏やかな時間が流れていたようにふり返ります。
健気に、たくましく咲くコスモス
だから今年の10月、再び小林市への取材が決まり、コスモスの時期の生駒高原を訪れるチャンスを得た私は、こんなふうに考えました。
「咲いている生駒高原と、咲いていない生駒高原。どちらが素敵だろう?」
そして3度目の生駒高原。満開期をもうすぐそこに控えたその場所は、オレンジとピンクのコスモスで彩られていました。
まだ満開とは言えない時期にも関わらず、コスモスを見ようと訪れたファミリーやカップルの姿もたくさん。物産市場や休憩用テーブル、アーティストのための特設ステージも広がっており、ハレの雰囲気に心が踊りました。
コスモスの満開期と合わせて開催されるナイトコスモスでは、毎年3000発の花火が打ち上げられるのだそう。「花火がコスモスを照らす様子は、どんなに幻想的だろう?」。きっと日中の景色を見て感じる気分とはまたちがったものになるに違いない、と思うのでした。
土産物売り場やカフェがある「花の駅 生駒高原」を含め、この一帯を管理しているのは、高速バスや旅行代理店を運営する宮崎交通。秋に花を咲かせるオレンジとピンクの2種類のコスモスは、満開になる時期を一緒にするため、初夏の頃、時期をずらしながら植えているのだそう。
生駒高原は、コスモスだけではなく、年間通して四季折々の花を咲かせます。宮崎交通の方々が丁寧に苗を管理しているのだと思うと、このコスモスの景色が、とても健気なものに感じました。私たちが訪れる数日前に訪れた台風の影響で倒れるコスモスも目立ったけれど、それでも格別に美しく感じたのは、不思議です。
ここは、訪れるたび景色を変える場所
咲いた生駒高原と咲かない生駒高原、どちらが素敵だろう?
結論は、ちょっとずるいのかもしれないけれど、どちらも素敵。というのは、咲いているときと咲いてないときのどちらの場合も、まだ出会ったことのない景色がたくさんあるだろうと思えるから。
咲いた生駒高原の、満開期やコスモス以外の景色はどんな様子だろう? 咲いていない生駒高原の、その静けさが早朝や夜だったときには、一体なにを感じるだろう?
こんなに「もしもこの状況だったら?」と新たな可能性を想像したくなるのは、もう3度訪れた生駒高原が、一度でもおなじ顔を見せたことがないからだと思いました。期待してしまう、きっとここは、訪れるたびに自分の想像を超えた景色を魅せてくれる場所なんじゃないか、と。
さて今度は、どんな季節に、どんな時間帯に、誰と、この場所へ来よう?
“星空の美しいまち日本一”に選ばれてきた小林市。その星々を観測した場所は、生駒高原なのだと、この記事の執筆に当たって伺いました。
これまで小林市街地で夜を過ごしたことは何度もありますが、暗くなってから生駒高原に足を運んだことはありません。
「今度は晴れた日の夜に訪れたいな」。
肉眼で見る生駒高原の星はきっとまた、写真を見たり話を聞いたりして想像できるものを超えて、美しいんじゃないかと期待してしまうから。
文/小山内彩希
写真/伊佐知美
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
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